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配信日:2022/06/12
部活研通信:「脳内の運動制御をモデル化する指導について」他
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一般社団法人 日本部活指導研究協会(略称:部活研)
「部活研通信」
"役立つ研修情報や部活動関連の情報をお送りします!" < 2022.6.10 配信 Vol.79>
info@bukatsu-japan.com
http://bukatsujapan.jimdo.com/
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学校行事も平常に戻りつつあるようですね。
ここまでの感染対策の生徒への影響が、これから随所に現れることが懸念されます。
検証と対策は丁寧にする必要があると思われます。

さて、いつもの通り、部活指導関連の情報をお届けします。
生徒のやる気のきっかけに活用出来るとっておきの話、連載「カナダトロントの部活事情」は今回の番外編2で、最終回です。
☆::::::::::::☆ お知らせ ☆::::::::::::☆
◎協会スタッフ募集のお知らせ
一緒に新しい部活動制度を作りませんか
http://bukatsujapan.hatenablog.com/entry/2020/10/31/131104
◎部活研Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCyk_TeDJ8rNeA4xTdqTuq2g

それでは、以下、今回の目次です。
☆::::::::::::☆ 目次 ☆::::::::::::☆
【1】部員の心が変わるとっておきの話
【2】部活News
【3】部活動指導員が組織する職能団体を想定した場合のモデル案
【4】部活動指導員検定3級、2級試験実施について
【5】カナダのスポーツ指導研修について(鈴木典子)

文責 中屋晋
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以上をお送りします。

【1】部員の心が変わるとっておきの話
〜脳内の運動制御をモデル化する〜
「学習とは文武両道である。両道とは二股を掛けていけるということで、それぞれべつべつにという意味ではない。脳でいうなら、知覚と運動である。知覚から情報が入り、運動として出ていく。出て行くが、運動の結果は状況を変える。その状況の変化が知覚を通して再入力される。こうして知覚から運動へ、運動から知覚という、ループが回転する。そうしたループをさまざまに用意してモデル化すること、これが学習である。」

これは養老孟司氏の著書「まともな人」の一節です。

以前、学習という言葉の語源について「真似て」と「慣れる」から派生して「学んで」と「習う」になることを紹介したことがあります。

これも「知覚→運動→知覚・・」のループのことを言っているのだと思います。

そのループによって脳内の運動制御をモデル化していくことが、いわゆるスポーツでの練習の目的なのだと思います。この脳内の運動制御のモデルが少ない場合は思うような運動パフォーマンスが得られないわけです。

技術の上達に悩んでいる方は、この辺が大きなヒントになると思います。

「運動」だけに練習内容が偏っていると脳内の運動制御のモデルが変化しにくいです。練習内容に「知覚」を使って、運動の仕組みやイメージを体現出来るよう試みると今までと違うステージでプレーが出来ると思います。

試合や発表会で結果を出すためには、「知覚」を駆使して運動制御のモデルのパターンを増やすこと、そして今持っているパターンを少しでも進化させることが肝要です。

筋力を上げる、スタミナをつけるだけでなく、自分のなかにある運動の仕組み自体を改善していく意識が本当の底力をつけることになると思います。

以前から主張しているのですが、「知ることによって上達する」この事が日本の指導者のスタンダードになって欲しいと思っています。単に厳しくとか、単に長時間とか、効率の悪い指導法を否定する指導者育成システムの構築を実現しなければと切に思います。

【2】部活News
○スパルタ部活指導、私はやめた 甲子園優勝監督の黒歴史と再出発
https://mainichi.jp/articles/20220604/k00/00m/050/105000c
(毎日新聞)

○中学校の“改革”で注目される「部活動指導員」 成功のカギ握る顧問との役割分担
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/db0b8be8aa978d0fe4305eedc54e9bbc926054f9&preview=auto
(full-Count)

○休日の部活指導、先生に聞いてみたら… 民間委託に「賛成」が6割超
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ626X3DQ5ZUNHB007.html
(朝日新聞)

○溝口紀子氏 中学校の部活動改革、教員は「時給300、400円…ボランティア精神でずっと続けてきた」
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/3a4aedba73596a48d56821065e7dd382c2b41c7b&preview=auto
(スポニチ)

○選手8名で常にカツカツ…大阪の元ヤンチャ公立高校野球部の顧問が編み出した"前代未聞の部員募集策"
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/224f1d3af10b9e1cf8ad932852013ab52c67aff6&preview=auto
(PRESIDENT)

○熱中症か...高校生救急搬送 “リレー”直後に体調不良
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/24d726d9b025bcd5e95638e43ae0f79370ad5f79&preview=auto
(FNNプライムオンライン)

○愛媛・聖カタリナ高校野球部、部員間で暴力行為か 昨春センバツ出場
https://approach.yahoo.co.jp/r/SwgTLr?src=https://news.yahoo.co.jp/pickup/6428144&preview=auto
(毎日新聞)

○中学校の“改革”で注目される「部活動指導員」 成功のカギ握る顧問との役割分担
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/db0b8be8aa978d0fe4305eedc54e9bbc926054f9&preview=auto
(full-Count)

○「佐々木朗希は強豪校に進まなくて正解だった」 松坂大輔育てた横浜高校元部長が分析
https://www.news-postseven.com/archives/20220513_1753417.html?utm_source=facebook.com&utm_medium=referral&utm_campaign=shared
(Newsポストセブン)


○「秀岳館高校」サッカー部事件、背後にある全く語られない教育現場の現実
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/05150800/?all=1
(デイリー新潮)

○部活指導、まず休日は地域移行を推進 熱意あふれる先生はどうすれば
https://www.asahi.com/articles/ASQ5D72P9Q5CUJHB01W.html
(朝日新聞)

○暴言・セクハラ繰り返す 生徒、同僚にも 45歳高校教諭を懲戒免職/岩手
https://news.ibc.co.jp/item_46594.html
(IBC岩手放送)



【3】部活動指導員が組織する職能団体を想定した場合のモデル案
3月5日のシンポジウム「怒らない部活指導を考える」の冒頭、
「部活動指導者(教員と外部指導者)が組織としてまとまって「部活動」を運営することは可能なのか」について話をしてみました。

部活動改革のなかで、複合的に錯綜した問題を解決するためには、それぞれのセクションの小手先の改良ではなく、大きな仕組みのなかに主軸となる新たな機能を加える必要があるのではと考えます。

その仕組みの中心に、今までにないゲームチェンジャーとなり得る組織を置くことで、今まで、構造的に身動きが取れなかったことがスムーズに展開出来るのではと思っています。

新しい発想のきっかけになれば、以下の動画をご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=T5JfLwQW52c&t=450s


【4】部活動指導員検定3級、2級試験実施について
○インターネット受験について、受付をホームページにて行っております。
【受験手順】
受験日を選択→ネット決済システムに登録→受験システムにログイン
→受験日当日(画面解答入力 ※3級の場合は動画講習あり)→1週間以内に合否通知

【検定試験実施要項】
こちらのURLからダウンロード確認出来ます。
https://00m.in/qxiSc

・オンライン検定試験
■3級:オンライン講義の後に画面解答入力 合格基準:正答率80%以上
<予定>
6月11日(土)、7月16日(土)、8月7日(日)、9月10日(土)、10月16日(日)、11月12日(土)、12月11日(日)
■2級:公式テキストを参考に画面解答入力 合格基準:正答率80%以上
<予定>
6月26日(日)
■申し込み・詳細
https://bukatsujapan.jimdofree.com/



【5】連載記事「カナダトロントの部活事情」〜番外編2〜(鈴木典子)
〜日本とカナダ、異なる環境のなか3人の野球少年の母親が見たものは〜

・筆者より
私は2007年3月末から2016年1月まで約9年間、夫の赴任に伴いカナダのトロントで暮らした。日本の学齢で小4終了、小学校卒業、中学校卒業した時点で移転した3人の息子は、現地の公立学校の教育を受け、カナダと米国の大学に入学した。移転して家を決める前に野球チームを決めたほど野球バカの一家だが、東京の少年野球チームや中学の野球部での経験が、英語もろくにできない子供たちがスムーズに現地になじむ大きな力になってくれた。

一方、冬の寒さと降雪の厳しい現地では、野球は夏季限定のスポーツだが、そのことが逆に日本では経験できないようなスポーツや学校でのクラブ活動を経験することができた。今回、本メールマガジンで、カナダ・トロントの部活動事情をご紹介させていただけることとなった。10年以上前のことなので、現在はだいぶ変わっているかもしれないし、記憶が間違っていることもあると思うし、あくまで一保護者の狭い経験に基づくものであることは、あらかじめご理解いただきたい。

《カナダのスポーツ指導研修について》
スポーツ庁が主導する有識者会議が5月31日に運動部活動を地域に移行することなどの部活改革の提言を固めて以来、各メディアで部活動の改革に係る話が取り上げられている。その中で部活動の指導者の確保や資質は大きなテーマの一つだろう。

学校教育の一環としての部活動の指導は、技術を教えるだけではだめだというのがその大本にある。では、部活動ではない青少年のスポーツ活動では、指導者は技術だけを教えればよいのだろうか。そうではない証左の一つが、柔道連盟から始まった小学生の全国大会の中止、勝利至上主義からの離脱の動きだろう。

そうした動きの参考になればと思い、私が経験したカナダでのスポーツ指導者育成について紹介する。

カナダでは、「NCCP:National Coaching Certificate Program(カナダコーチング資格プログラム)」という組織がある(注1)。この組織が、1974年以来、国及び州のスポーツ団体を通して標準化された指導者育成プログラムを提供しており、その種目は現在65に及んでいる。私が取得した野球のコーチングを題材にその概要を紹介しよう。

カナダの野球指導についてはBaseball Canada(カナダ野球連盟)のホームページにリンクがある(注2)。指導者(コーチ)育成プログラムは州ごとに提供されるが、登録時に幼児からシニア(大学生以上成人)まで、コミュニティスポーツか競技スポーツか、ヘッドコーチかアシスタントコーチかなど、細かく条件分けをしてゴールを設定させた上で受講が開始する。オンラインでの講義と複数の受講者がオンサイトでディスカッションをしたりする場の両方を受講して、初級レベルのコーチ資格が取得できる(注3)。

資格の維持のためには、コミュニティスポーツについては条件はないが、競技スポーツの場合は5年間に20PDポイント(Professional Development Point。注4)が必要とされている。PDポイントは、カナダ野球連盟や地域の野球連盟が提供する研修に参加すると取得できる仕組みになっている。因みに、このPDと言うのは教員のいわゆる「研究日」としても使われている表現で、専門的な能力向上のための研修を指している。

私がコミュニティスポーツの初心者コーチのレベルを受講したのは6年以上前のことだが、オンラインの講義で多くの時間がチーム編成、選手起用、保護者とのコミュニケーション、ハラスメント防止などの教育的、心理学的な内容だったのがとても新鮮だったのが忘れられない。

オンサイトでの研修も、設定された場面で選手が実力を発揮できなかった時に、チーム全体で、また、選手たちの保護者に対して、どのような対応をすべきかを考えてディスカッションして、グループでの結論をまとめて発表しあうという内容だったと思う。当時50代前半だった私よりも年配の男性もいたし、学生と思われる若い人も女性もいて、色々な人が地域スポーツを支えており、研修を受けてより良い指導者として努力していることに、感銘を受けた。

上位のコーチの資格を取るには、研修の受講だけではなく実際の指導経験も要件として定められていて、積み重ねていけば、国の代表チームのコーチをすることも可能になる。逆に、たとえオリンピック選手であっても、NCCPが提供する研修を受けて指導の経験を積まなければ、正式にはアシスタントコーチにもなることはできないのだ。(おそらく外部指導者として技術指導を仰ぐ、ということは可能だろう)

最初の頃に紹介したように、カナダでは就学前の年齢から地域のスポーツクラブに安価な参加費で参加して、60代を過ぎてもシニアとしてスポーツを続けることができる。その活動を支えるのは、カナダ国内全体で提供される標準化されたコーチ養成プログラムが一定水準のコーチを育てているからだろう。

ただし、これらの資格は学校の部活動の指導には求められておらず、部活動の顧問・指導教員は、ほとんどの場合は自分が経験した競技や芸術を指導している。これは、上述のスポーツコーチに必要とされる「教育的・心理学的知識や能力」が教員がすでに持っている知識や能力だからだろう。

特にカナダの運動部活動は競技スポーツよりコミュニティスポーツに近い「楽しむ」スポーツなので、より高度な技術を指導する能力はあまり求められていないのである。教員の養成に際して、日本とカナダでどのように違うのかについても知りたいところだ。

注1:National Coaching Certification Program | CAC
注2:https://nccp.baseball.ca/status.php#Baseball_Safe_Sport_All_Coaches_link
注3:
https://nccp.baseball.ca/index.php?new_province=ON&new_year=2022&page=180&printable=
ただし、新型コロナウイルス感染予防のため、オンタリオ州では現在オンラインコースだけになっているようだ。
注4:https://nccp.baseball.ca/index.php?page=194

※鈴木典子さんのブログです。
https://thegroupofeight.com/category/writers/%e9%88%b4%e6%9c%a8%e5%85%b8%e5%ad%90%e3%80%80noriko-suzuki/


今回もご高覧ありがとうございました。
部活研はこれからも具体的に行動します。
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◎協会スタッフ募集のお知らせ
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