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配信日:2021/12/10
部活研通信:シンポジウム<益子直美×長沼豊>「怒らない部活指導を考える」他
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一般社団法人 日本部活指導研究協会(略称:部活研)
「部活研通信」
"役立つ研修情報や部活動関連の情報をお送りします!" < 2021.12.10 配信 Vol.73>
info@bukatsu-japan.com
http://bukatsujapan.jimdo.com/
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コロナ禍の日常で2度目の師走ですね。何だか1年の時の流れが、今までになく早く感じます。この騒動もいつまで続くのやら。

連載記事「カナダトロントの部活事情」も5回目です。ご質問、ご感想を受付けています。カナダでの、スポーツと学校教育の支え合いの体制も参考になります。

そして、いつもの通り、部活指導関連の情報をお届けします。
生徒のやる気のきっかけに活用出来るとっておきの話もあります。
☆::::::::::::☆ お知らせ ☆::::::::::::☆
◎協会スタッフ募集のお知らせ
一緒に新しい部活動制度を作りませんか
http://bukatsujapan.hatenablog.com/entry/2020/10/31/131104

それでは、以下、今回の目次です。
☆::::::::::::☆ 目次 ☆::::::::::::☆
【1】部員の心が変わるとっておきの話
【2】部活News
【3】対談イベント<長沼豊×益子直美>について
【4】部活動指導員検定3級、2級試験実施について
【5】「学校外における学修の単位認定」を部活動に適用できないか
【6】日本部活動学会 第4回研究集会のご案内
【7】新連載記事「カナダトロントの部活事情」(5)

文責 中屋晋
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以上をお送りします。

【1】部員の心が変わるとっておきの話
〜超一流になるのは才能か努力か〜
フロリダ州立大学心理学部のアンダース・エリクソン教授の著書「超一流になるのは才能か努力か?」に面白い見解を見つけました。

さて、そこそこ強い選手と一流の選手の違いは、その能力、ひいては人生を分けたものは一体何なのでしょうか。

エリクソン教授はこの件を解明する調査を思い立ち、バイオリン科の教授に協力を依頼し、卒業後に世界トップクラスのバイオリニストになることが確実な生徒(Sランク)、優秀ではあるものの世界で活躍する程の実力は持っていない生徒(Aランク)、そして教員コースに進んだ生徒を、それぞれ10人ずつ選出しました。

そして、その3つのグループの間で、18歳になるまでの練習時間の合計を調査したところ、教員コースに入学した学生は、平均で3420時間、そして、Aランクの学生はそれを上回る5301時間、そしてSランクの学生は7410時間もの練習を積んでいたのです。

つまり、彼らの中には、比較的少ない練習時間で高い能力を獲得することができた、いわゆる「天才」は一人もいませんでした。言わば、単純に「能力の差は練習時間の差」という結果だったわけです。 私も結果を出すためには、「量」は絶対的に必要だと思っています。

ただ、「量」を作るには、効果的な練習内容が必要だと思っています。さもなければ、膨大な「量」を生み出すモチベーションが持続出来ないからです。内容を考えずに「量」だけで全てを解決しようとする方針には賛成しかねます。

ここでエリクソン教授も、もう1つの視点を加えています。時間量だけではなく、「正しい努力」をする必要があるという点にも言及しています。 「正しい努力」について、この「超一流」研究で使われている言葉では、「限界的練習」という練習法を結論として推奨しています。

「限界的練習」の一番の特徴は、自分にとっての「コンフォート・ゾーン(居心地が良い領域)」から飛び出し、限界を少しだけ超える負荷を自身にかけ続けることにあります。

出来ないこと、新しい課題と向き合わない状態が、コンフォート・ゾーンに居続けるという意味です。 出来ないことを突きつけられるのは気持ちいいものではありません。特にプライドの高い人にその傾向があります。

生徒を褒めることの指導効果を認識しつつ、課題に対する改善の方向性や改善のためのヒントを添えることは、ここで言う「限界的練習」に繋がると思います。何が課題なのかも知らせず、限界に迫る練習を「しごき」と言います。

課題の認識のためにダメ出しは必要ですが、分かりやすい改善のヒントを添えることは、ダメ出し以上に大切なことだと思います。この意識を持つことが、結果的に膨大な練習量を生み、「一流」の技を形成することに繋がるのでしょう。

「限界的練習」の意義は理解出来ますが、指導者としては、「量」を目指すより「質」を目指すことの方が、実は合理的のような気がします。



【2】部活News
○「気持ちつたわる手紙」届いたイチローさん、都内の高校で指導…走り方を実演
https://www.yomiuri.co.jp/sports/yakyu/20211129-OYT1T50221/
(読売新聞)

○“部活の常識”を覆せ! 「全体練習は週3回、1時間半」なのに花園常連…静岡聖光学院ラグビー部の効率化がスゴい
https://number.bunshun.jp/articles/-/850968
(NumberWeb)

○部員減少、働き方改革…課題多い“令和の部活動” 野球部支える元教諭 休日もボランティアで指導【福井発】
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211202/k10013371731000.html
(FNNプアイムオンライン)

○ハンマー事故 顧問2人を書類送検 盛岡農業高校 生徒2人けが<岩手県>
https://news.yahoo.co.jp/articles/129fe851102498b66ac415925d3cbdb70f19b856
(FNNプライムオンライン)

○「悪いことをすれば会社を辞められる」窃盗で部活動指導員に懲戒免職処分 【長崎】
https://news.yahoo.co.jp/articles/d7f1d71bddd17d8909c5d4f39d57c917647a1129
(テレビ長崎)

○高校女子バスケ元顧問 部員の首絞め 指導者資格、2年間停止処分
https://www.at-s.com/sp/news/article/shizuoka/985835.html
(朝日新聞)

○先生も休みをしっかり 休日の部活は地域にお任せ 現場の模索始まる
https://www.asahi.com/articles/ASPD34HKFPD3UTQP001.html
(朝日新聞)


【3】対談イベント<長沼豊×益子直美>について
日時:2022年3月5日 13:30〜
場所:全水道会館(JR水道橋駅から徒歩3分)
テーマ「怒らない部活指導を考える」

間違えや思い違いを1人で修正することは難しい。

その時、「怒る」ことによる軌道修正にどれほどの効果があるのか。もしかしたら、感情的、身勝手な指導になっていないか。

単に伝統的な指導法を全否定するだけでは解決しない問題が、そこにある。

生徒自ら考え、本当に生徒の成長のためになる部活指導とは何かを考えます。

トップアスリートの貴重な実体験と研究者の科学的視点から、新時代に相応しい価値観を持った新しい指導者像に迫ります。

講師:
・益子直美
元バレーボール全日本代表選手、日本バレーボール協会理事
2021年一般社団法人 監督が怒ってはいけない大会 と言う名前の会社を設立。「監督が怒ってはいけない益子直美カップ」主催、スポーツキャスター・タレント・講演会活動等、多方面で活躍
・長沼豊
学習院大学文学部教授 2017年日本部活動学会を設立し初代会長に就任。文化庁「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議」で委員・座長を務める。
著書「部活動の不思議を語り合おう」(ひつじ書房)

シンポジウムコーディネーター:
・朝日新聞スポーツ部記者 中小路徹

◎募集開始:2022年1月


【4】部活動指導員検定3級、2級試験実施について
○インターネット受験について、受付をホームページにて行っております。
【受験手順】
受験日を選択→ネット決済システムに登録→受験システムにログイン
→受験日当日(画面解答入力 ※3級の場合は動画講習あり)→1週間以内に合否通知

【検定試験実施要項】
こちらのURLからダウンロード確認出来ます。
https://00m.in/qxiSc

・オンライン検定試験
■3級:オンライン講義の後に画面解答入力 合格基準:正答率80%以上
<予定>
12月12日(土)、1月15日(土)
■2級:公式テキストを参考に画面解答入力 合格基準:正答率80%以上
<予定>
12月26日(日)
■申し込み・詳細
https://bukatsujapan.jimdofree.com/


【5】「学校外における学修の単位認定」を部活動に適用できないか
教育課程外に位置付けられている「部活動」についての学校教育のなかでの位置付けなのですが、1つの案として、平成10年より学修による単位認定の幅が広がりを見せており、その制度を活用してはどうだろうと考えています。

この制度は平成10年から始まったものなのですが、現在、学校外の学修には、就業体験、ボランティア、資格取得などで認められるケースが多い状況です。

現状、自由意思は尊重されているかたちです。指導は教員に限りませんので、部活動の外部指導者による指導のもとでも可能であり、生徒のスポーツ、文化活動の成果を正規の教育課程として評価出来る1つのかたちになると思います。

実際、職業高校では、資格の取得やコンテストの成果を単位として認定することは、実際によく行われています。

ですから、この学修単位の認定制度を上手く活用すれば、生徒の多様な能力を伸ばせる部活動の良さは残せるのではという発想に繋がると考えます。

正規の評価と部活動が繋がることで、指導の過熱化を懸念する意見もありますが、今の法的根拠もなく、加熱している状態、または進路の推薦要項として取り扱われている現状よりは遥かにマシな気がします。

【6】日本部活動学会 第4回研究集会のご案内
2021年12月18日【日本部活動学会主催 第4回研究集会】
テーマ「いま、求められる「部活動」のサポートとは?」
―持続可能なマッチングを探る―

・申し込み詳細
https://www.kokuchpro.com/event/e4c0f67f0c8d5ee3145dceb12028905e/

【7】連載記事「カナダトロントの部活事情」(5)
〜日本とカナダ、異なる環境のなか3人の野球少年の母親が見たものは〜

・筆者より
私は2007年3月末から2016年1月まで約9年間、夫の赴任に伴いカナダのトロントで暮らした。日本の学齢で小4終了、小学校卒業、中学校卒業した時点で移転した3人の息子は、現地の公立学校の教育を受け、カナダと米国の大学に入学した。移転して家を決める前に野球チームを決めたほど野球バカの一家だが、東京の少年野球チームや中学の野球部での経験が、英語もろくにできない子供たちがスムーズに現地になじむ大きな力になってくれた。

 一方、冬の寒さと降雪の厳しい現地では、野球は夏季限定のスポーツだが、そのことが逆に日本では経験できないようなスポーツや学校でのクラブ活動を経験することができた。今回、本メールマガジンで、カナダ・トロントの部活動事情をご紹介させていただけることとなった。10年以上前のことなので、現在はだいぶ変わっているかもしれないし、記憶が間違っていることもあると思うし、あくまで一保護者の狭い経験に基づくものであることは、あらかじめご理解いただきたい。
カナダトロントの部活動事情(5)
《上位大会組織について(高校レベル)》
本稿の(1)で紹介したとおり、オンタリオ州では、地区の大会の上位校が市の大会、更にその上位校が州大会に進むシステムになっている。学校単位で参加する全国大会はないため、学校のスポーツチームが目指す最高位は、OFSAA(注1)で優勝することだ。

OFSAAのサイトを見ると、OFSAAが学生選手と「ボランティアの教員コーチを支援する」と明記してある。日本同様に、オンタリオ州の高校部活動コーチも、教員の場合は無給であることがわかる。一方、OFSAAのミッションは、「学生の成功を培い、スポーツを通して教育を豊かにする」こととしており、学校での部活動が、教育において重要な位置づけであることがわかる。

社会的にもアマチュアスポーツとして高校の部活動は注目されており、トロントのトップの一般紙であるToronto Star紙が、大会の結果報道に加え、その年の最優秀スポーツ選手(The Athlete of the Year)が報道している(注2。恥ずかしながら我が家の息子の名があげられている例を参考まで共有します)。

《参考:全国大会》
運動系のアマチュアスポーツの大会としては、Games OntarioとCanada Gamesがある。
どちらもSummer GamesとWinter Gamesを2年ごとに開催しており、パラスポーツ大会もあるところは、オリンピックに近い体系だ。それぞれオンタリオ州とカナダ国内の都市が持ち回りでホストタウンとなっている(注3)。

参加資格はスポーツごとに決められているがおおむね18歳以下が多い。日本の高校総体に近い大会だが、州や市の代表で、州/市の各スポーツ協会が選抜したチームが参加することを考えると、国体に相当するともいえる。

ここからは筆者が、不勉強で日本に国体のジュニア大会があるかどうか知らず、ないという前提での感想になる。日本では高校生の年齢のスポーツ選手が全国レベルで力を試したい場合、住んでいるところで組織されるチームではなく、所属する高校の部活動単位でしか参加できず、つまり、部活動が青少年のスポーツにとってほぼ唯一の活動の場になっている。

義務教育ではないため、高校を勉強をする場として選ぶと同時に、もともと娯楽や楽しみのための活動であるスポーツをする場としても選ばなければならないのだ。

トロントでは、義務教育制度の下、ほぼ無料で高校に通え、スポーツや芸術などの活動については学校の部活動に加えて、地元などのクラブに所属して高い水準を目指すことができる。青少年の人生にとって重要な要素である勉強とスポーツを、切り離して選ぶことができるトロントが良いのか、一緒に考えて学校を選ぶ日本が良いのか。(続く)

1. オンタリオ州学校体育協会(OFSAA:Ontario Federation of School Athletic Associations。https://www.ofsaa.on.ca/about)(Ontario Federation of School Athletic Associations - Wikipedia)。オンタリオ州内の18地区に所属する840校の代表がOFSAAの開催する20種目についての38の州大会に参加する。2021年9月時点のウィキペディアによると27万人の学生と1万6千人の教員コーチが加盟する北米でカリフォルニア高校体育協会に次ぐ第二の規模を誇る。組織図は下記参照。OFSAA ORGANIZATIONAL STRUCTURE (clarkofsaa.s3.ca-central-1.amazonaws.com)
2. 高校スポーツの報道例
High school results, June 23 | The Star 2010年野球 トロント市大会準決勝及び決勝(準決勝の勝利投手が鈴木の長男、決勝の敗戦投手が同次男です)
Athletic honour roll for 2008-09 | The Star (トロントの公立高校Forest Hillの該当者が鈴木の長男です)
1. Games Ontario:Games Ontario (gov.on.ca)、Game ON – The Ontario Government's Sport Plan
Canada Games:Canada Games - Wikipedia、Home (canadagames.ca)



※鈴木典子さんのブログです。
https://thegroupofeight.com/category/writers/%e9%88%b4%e6%9c%a8%e5%85%b8%e5%ad%90%e3%80%80noriko-suzuki/
※本連載記事「カナダトロントの部活事情」についての、ご意見、ご感想、質問等は、info@bukatsu-japan.comまで、お待ちしております。


今回もご高覧ありがとうございました。
部活研はこれからも具体的に行動します。
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□発行 一般社団法人 日本部活指導研究協会
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