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配信日:2021/04/11
部活研通信 研修会:文科省と現役顧問が考える部活動理想像のズレについて
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一般社団法人 日本部活指導研究協会(略称:部活研)
「部活研通信」
"役立つ研修情報や部活動関連の情報をお送りします!" < 2021.4.10 配信 Vol.65>
info@bukatsu-japan.com
http://bukatsujapan.jimdo.com/
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新年度が始まりました。新鮮な空気が学校内に満ちる季節ですね。

さあ、今回も部活指導関連の情報をお届けします。
生徒のやる気のきっかけに活用出来るとっておきの話もあります。
☆::::::::::::☆ お知らせ ☆::::::::::::☆
◎部活研通信、一般会員入会のお願い
一般会員になることで、「当協会主催の研修会への参加料金が割引になる」などのサービスを受けることができます。当協会の目的にご賛同いただける方は、
本協会ホームページよりお手続きをお願いいたします。

それでは、以下、今回の目次です。
☆::::::::::::☆ 目次 ☆::::::::::::☆
【1】部員の心を変えるとっておきの話
【2】部活News
【3】部活動指導員検定3級、2級試験実施について
【4】次回の研修会「新聞記者の取材から見えてきた新しい部活動のかたち」
【5】「科学的根拠を持ってより質の高い指導に向けて」早稲田大学スポーツ科学学術院より
【6】第4回日本部活動学会に参加して
文責 中屋晋
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以上をお送りします。

【1】部員の心を変えるとっておきの話
〜言葉で伝えきれない技術〜
最近、古武術の教えをスポーツの技術指導に活用するケースをよく耳にします。私も何冊かの本を読んでみました。なるほど、長い歴史がバックボーンにあるだけに合理性を追求した成果をかい間見れる様な気がしまいた。
 
その合理的な身体の動かし方の根拠になっているのが「理合い」と言われる特別に洗練された考え方というか理論というか、元になる理屈だそうです。
 
その「理合い」を言葉で言い表せない代わりに武道の世界で伝えられてきたのが、「型」と言われるものです。空手の型、柔道の型、剣道の型などです。
 
「剣術の基本は素振りです。その回数を重ねることによって理合いを理解するのです。」これは、ある剣道の師範の方から聞いた言葉です。
 
何となくわかるのですが、一方では実戦が基本の型通りになるとは限らないという声もあり、「型」がきれいに出来ていることが実戦での実力に必ずしもつながらないという意見もあります。
 
多くの指導者の課題は、言葉では伝えられないものをいかにわかりやすく伝えるかということだと思います。見てすぐ出来てしまう人や、もともとの運動能力で結果を出せる人は「型」を気にすることなく、実戦を戦えばいいと思います。
 
基本の「型」など知らなくても強い武道家はいくらでもいます。もともと持っている身体能力をベースに戦えばいいわけですから。後は身体能力の限界にどう対処するかだけです。
 
一方、時間を掛けて上達するタイプの生徒の場合、言葉では言い表せない「理合い」を基本の「型」として繰り返し練習することによって、未発達の神経回路が自然に形成されます。つまり、「理合い」を一般化した「型」は、無意識の気づきと力を引き出してくれるのではと思うのです。いわゆる内発的な気づきになるのでは。
 
当然、試合では相手が型通り動くわけないのですが、「型」を繰り返し練習することによって、その場その場に合った「理合い」を瞬間的に使えるようになっていくことは、習い事の成長過程てして現実にあるような気がします。
 
基本を繰り返すことで言葉で伝えられない身のこなし、「理合い」が身に付くという考え方って日本人に合っているような気がするのですがどうでしょう。

【2】部活News
○【部活と勉強】元県立浦和校長の私立武蔵校長に聞く 「部活は勝利至上主義に走ってはいけない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/b6f1d6f65a7650c133c791083
(朝日新聞)

○萩生田文科相、教員免許更新制の見直しを諮問 廃止求める声も
https://mainichi.jp/articles/20210312/k00/00m/040/190000c
(毎日新聞)

○「この裁判に日本の教員の運命がかかっている」埼玉教員訴訟、本人尋問で訴えた男性
https://news.yahoo.co.jp/articles/381fde7aec3854acafbeed993dc326b6586346ef
(弁護士ドットコムニュース)

○鬼監督からカリスマ指導者に 問題児が見せた大事なこと
https://www.asahi.com/amp/articles/ASP347QW4P2TUTQP011.html?__twitter_impression=true
(朝日新聞)

○【部活と勉強】ベネッセ調査にみる 「部活動と学習時間の関係はほとんどない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/72e447cd17eab11b64b5290f72ce1c137738fa18
(朝日新聞)

○2021年、今人気の部活ランキング発表!2位はダンス部、1位はまさかの…
https://news.yahoo.co.jp/articles/aabf0230392180c73a0882aac5ca3015b449c8e9
(cancan.jp)

○中学校教員の9割「賛成」…学校の部活動の休日外部委託 一方で部活動を通した生徒らとの関わり望む教員も
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0534ec0fb74af7dc3fb01dd3e4bc10b23f90c8d
(富山テレビ)

○部活動の大会中止で仲間の力に 高校生が晴れ舞台を用意
https://www.kyobun.co.jp/news/20210330_03/
(教育新聞)

【3】部活動指導員検定3級、2級試験実施について
◎インターネット受験について、受付をホームページにて行っております。
【受験手順】
受験日を選択→ネット決済システムに登録→受験システムにログイン
→受験日当日(画面解答入力 ※3級の場合は動画講習あり)→1週間以内に合否通知

【検定試験実施要項】
こちらのURLからダウンロード確認出来ます。
https://00m.in/qxiSc

・オンライン検定試験
■3級:オンライン講義の後に画面解答入力 合格基準:正答率80%以上
<予定>
4月17日(土)
■2級:公式テキストを参考に画面解答入力 合格基準:正答率80%以上
<予定>
4月25日(日)(4月21日申し込み締切)
■申し込み・詳細
https://bukatsujapan.jimdofree.com/

※今月より検定試験の実施回数が、3級について月に1回 2級について3か月に1回程度になります。試験のための準備期間を十分に取れる日程にしました。

【4】次回の研修会「新聞記者の取材から見えてきた新しい部活動のかたち」
現在の部活動改革の動きを作った部活動の事例を取材してきた中小路記者に講演をお願いしました。
取材のなかで見えてきた新しい部活動のかたちと、今後、部活動指導、スポーツ指導の形態はどう変わるか、政府の政策などを睨みながから今後の部活動を読み解きます。

後半は、長年に渡りバスケット部顧問として、また高体連バスケットボール部の役員として、部活動指導に携わってこられた江戸川高校の奥谷校長と中小路記者との対談です。

現在、部活動改革が謳われているなか、一方では、過酷な部活動へのノスタルジック、不合理、理不尽によって得られたメンタルタフネスへの評価など、依然とし根強い評価と価値観があるなか、今後、新しい部活動を探っていくにあたり、それらの価値観とどう向き合って行くべきかについて語って頂きます。

日時:6月26日(土)14時〜16時
場所:オンライン会議ソフト「ZOOM」
講師:朝日新聞記者 中小路徹
※「脱ブラック部活動」の著者であり、「部活動改革の今」などの特集記事を担当。
内容:
第1部 講演「記者の取材から見えてきた新しい部活動のかたち」
第2部 対談「文科省と現役顧問が考える部活動理想像のズレ」
対談講師:都立江戸川高校校長 奥谷雅之 
申し込み:
https://kokucheese.com/event/index/610556/


【5】「科学的根拠を持った質の高い指導に向けて」早稲田大学スポーツ科学学術院より
理事の大津です。今回は会員の皆様にご紹介したいことがあります。
私が部活指導の参考にしているものの一つに、早稲田大学「Sport X Management Lab」のHPがあります。
「Sport X Management Lab」は、世の中の様々な課題に対してスポーツを活用した解決策を提供しています。
そして現在スポーツ指導に関する研究を実施しており、それに協力できるスポーツ指導者を募集しています。
詳細は、添付のチラシとHPでご確認ください。
https://note.com/sxmlab

この研究に協力することで、日本のスポーツ指導、部活指導が少しでも良くなればと思い、私は部活動指導者として協力することにしました。
先日、主任研究者の木下様に内容を伺ったところ、年に数回ほど指導している選手に対してアンケートを実施したい、とこのことでした。
アンケートは新入部員が入部してから実施するそうなので、もうすぐスタートになります。
もしご興味があれば、一度問い合わせをしてみてください。



【6】第4回日本部活動学会に参加して
 3月27日にオンライン開催で、第4回日本部活動学会が開催されました。自由研究発表や部活動研究の専門家によるシンポジウムがあり、充実した内容でした。
 特に印象に残ったのは、一橋大学名誉教授の内海和雄先生の講演でした。始めて聞く方には、刺激的な講演だったのでないでしょうか。いずれにしても、部活動研究では、草分け的な研究者ということもあり、内容の濃い話を聞くことができました。ご著書には、1998年に出版された「部活動改革」があります。
 
■内海先生の主張で大きく頷いた部分2点について
1、国として指導者育成体制に取り組むべき。
 これは、まさに我々、部活研が取り組んでいる方向性そのもので、国や企業には、トップアスリートを宣伝やPRに使うことだけではなく、そのアスリートを育てる仕組みを作り、指導者の意識作りの根本から取り組んで欲しいと思っています。
 基本姿勢としては、部活動指導員を国家資格また公的資格として制度化し、現状のスポーツ・文化が、日本社会に果たしている役割に見合うガバナンス体制を構築されることを願いながら活動をしており、そのための試行的な取り組みが、当協会が主催をしている部活動指導員検定事業になります。
 
2、国の経済規模の割に教育関連、特に部活動関連予算が少ない。
 スポーツや文化活動の社会的な気運や関心の高まりは、経済、政治、教育のプラス面に大きく貢献してしていますが、それに見合う予算が計上されていないのではと思っています。
 例えば、全国の中高全1万5千校に対して部活動指導関連予算として1校に1千万円ずつ計上したとしても、千5百億円です。オリピック予算の10分の1以下です。どうでしょう、部活動の果たしている役割、スポーツ・文化の果たしている経済効果などを考えれば予算規模として想定可能な範囲内と思うのですが。


■以下、内海先生の講演の要点をまとめてみました。
◎戦後の部活動(1950年代〜)
・部活動は、広い深い人格形成の場として承認され、学校教育の中心を占め、イギリスから世界へ普及したもの。
・戦後すぐ「スポーツよって民主主義を植え付ける」という占領軍の方針のもと部活動が推進された。
・自主的なスポーツ活動として始まった部活動には教師は介入しないことが原則だったが、学校も教師も民主的な部活動の運営などほとんどわからないなか、その活動は放置されつつ継続されていった。
・指導者の位置付けや、指導方法なども曖昧な体制だったので、戦前の経験が踏襲され、軍事教練的な上意下達や一方的な命令の指導法が部活動に根付いてしまう。

◎高度成長期の部活動(1970年代〜)
・経済成長とともに、成果主義、権威主義が社会の価値観の中心となり、部活動でもより良い結果を出した教員の校内での存在感が大きくなり、「部活人事」という名の下の異動が増えた。
・結果を求める思考の先に、部活動の活動頻度の増加があり、よって教師も生徒も「部活づけ」の状態に陥った。家庭で言う事を聞かない子供の自由な時間を部活で埋めること、つまり「部活づけ」という指導を学校が担うことになる。
・「部活づけ」のもう一方の効果は教員の管理であった。文部省には、日常の多忙によって権利の主張から意識をそらすという意図があったのではないか。
・「生徒の意欲に応えるべきだ」など、部活動の正当性を前面に出し続ければ、教員管理に部活動は有効的に機能した。よって、部活動中の問題については、文部省は分かっていて何もしないという「無策の策」を取り、それが教員管理に最大の効果を生むことになる。そして、予算提示のない答申が繰り返され、部活動問題は深刻化を増していくことになる。

◎国の条件整備のための義務
・スポーツ政策は、福祉政策の一部であり、「Sports for all」の理念の実現に他ならない。現在の日本は、GDPは世界3位だが、予算の使い方は軍事や産業基盤の整備費に偏っている。企業国家であり、軍事国家であり、非福祉国家であると言える。
・国民スポーツの発展に、国家の条件整備の義務として大きく3つある。1)スポーツ施設の整備、2)指導者養成制度の整備、3)地域スポーツクラブ育成
・OECD内のGDPにおける教育費の割合は、28か国中24位という低さ。さらに、スポーツ関連予算のGDP比は、日本を1としたら、イギリス10倍、フランス11倍になる。よって、上述の国民スポーツの発展に、国家の条件整備の義務を果たすことは難しい。
・日本国内の地域のスポーツ施設とスポーツクラブは減少傾向にある。このことは国民スポーツの発展にはマイナスであり、医療体制の維持、スポーツする権利の保証を損なうことになる。この状態で部活動の地域移行を考えるべきではない。
・オリンピックのレガシーの中心は何かと言ったら国民スポーツの発展だが今の日本はそれをないがしろにしている。開催都市の東京都でさえ、オリンピックとスポーツの発展を関連付けた政策が見られない。
・部活動の活発化の答えは、1)教員数を増加させる、2)部活動関連予算を増やす、3)部活動指導者の負担軽減、この3点である。
 

今回もご高覧ありがとうございました。
 部活研はこれからも具体的に行動します。
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◎協会スタッフ募集のお知らせ
一緒に新しい部活動制度を作りませんか
http://bukatsujapan.hatenablog.com/entry/2020/10/31/131104

◎「部活研通信」バックナンバーはこちら
https://sv2.mgzn.jp/pub/mailList.php?cid=N906697

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□発行 一般社団法人 日本部活指導研究協会
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