ベトナムなど、米中合作アニメに反発 地図に「九段線」
【マニラ=遠藤淳】米中合作のアニメ映画に出てくる南シナ海の地図に中国独自の境界線「九段線」が描かれているとして、ベトナムとフィリピンが反発している。ベトナムは上映を中止し、フィリピンは外相がボイコットを呼びかけた。両国は中国と南シナ海の領有権を巡って対立しており、中国の一方的な主張が映画を通じて広がることを懸念した。
アニメ映画は少女と伝説の生き物イエティとの交流を描いた「アボミナブル」。米ドリームワークス・アニメーションと上海のスタジオが共同で制作した。9月に米国で公開され、北米の興行収入で上位に入るなど話題を呼んだ。
ベトナムで4日に公開されると、南シナ海の地図に中国が主権の及ぶ範囲と主張する九段線が描かれているとの指摘がSNS(交流サイト)を通じて広がった。地元メディアによると、ベトナムの配給会社は13日に上映を中止し、「今後は十分気をつけたい」とコメントを出した。
こうした動きが伝わり、フィリピンのロクシン外相は15日、「ドリームワークスの全ての作品の観賞をボイコットするよう呼びかけたい」とSNSに投稿した。16日にも「問題のシーンをカットすべきだ」と再び書き込み、不快感をあらわにした。
ベトナムやフィリピンは、南シナ海のほぼ全域に中国の主権が及ぶとする九段線に反発している。フィリピン大のジェイ・バトンバカル教授は「中国のプロパガンダにあらがわなければ、その主張が既成事実化しかねない」と指摘する。